2002年4月15日

TOPPERSプロジェクト
http://www.ertl.jp/TOPPERS/

TOPPERS/JSPカーネル Release 1.3 の配布を開始
〜 新たに5種類のプロセッサに対応・システムLSIへの適用も狙う 〜

豊橋技術科学大学 組込みリアルタイムシステム研究室を中心に組込みシステム構築の基盤となる各種のフリーソフトウェア開発を行っているTOPPERSプロジェクトでは、μITRON仕様に準拠したリアルタイムOSであるTOPPERS/JSPカーネルRelease 1.3の配布を、本日付けで開始しました。Release 1.3では新たに、M32R(三菱電機)、MicroBlaze(Xilinx社)、TMS320C54x(TI社)、i386(Intel社)、H8S(H8S/2350;日立製作所)の5種類のターゲットプロセッサをサポートしました。

今回、新たにサポートするプロセッサを選ぶにあたり、システムLSI開発への適用を強く意識しました。システムLSIの大規模化が進行する中で、システムLSIに組み込まれるソフトウェア(ファームウェア)も複雑化しており、この分野においてもリアルタイムOSに対するニーズが高まっています。TOPPERSプロジェクトでは、システムLSI開発の分野にも適用できるリアルタイムOSソリューションを目指して、新たなプロセッサをサポートすることになりました。

M32Rは、三菱電機オリジナルの32ビットRISCプロセッサコアで、デジタル情報機器や通信機器などに幅広い実績があります。今回M32Rをサポートプロセッサに選んだのは、その幅広い実績に加えて、三菱電機から研究教育機関に対して、M32R/Eシリーズ・マイクロコンピュータに搭載されているプロセッサコアの設計データを提供する旨の申し出があったためです。特に、このプロセッサコアの設計データは、ソフトプロセッサコアとしてFPGAに搭載できるもので、TOPPERS/JSPカーネルは、M32R/Eシリーズのマイクロコンピュータで動作するとともに、FPGAに搭載されたM32Rソフトプロセッサコアでも動作させることができます。豊橋技術科学大学を始めとする研究教育機関では、M32Rソフトプロセッサコアとそれに対応したTOPPERS/JSPカーネルを、マイクロプロセッサ技術とリアルタイムOS技術の総合的な研究・開発への活用が期待できます。

三菱電機セミコンダクタ・アプリケーション・エンジニアリング(株) マイコンツール部 部長 亀井達也氏は、「TOPPERSは、リアルタイムOSを使用する組込み分野のソフトウェア開発者にとって、(1) 異なるマイクロコンピュータ間のソースレベルの互換性が向上することにより、開発したアプリケーション・プログラムの流用性が高まる、(2) その結果、サードパーティによるミドルウェアや統合開発環境の技術蓄積が促進される、といった効果が期待され、TOPPERS/JSPカーネルがM32Rをサポートしたことを歓迎しています。三菱電機(株)および三菱電機セミコンダクタ・アプリケーション・エンジニアリング(株)は、インターネット応用向けソリューション環境であるT-Engineと並行し、TOPPERSベースの組込み向けソリューションを強化していきたいと考えています。さらに、今回の開発が、豊橋技術科学大学と三菱電機(株)、三菱電機セミコンダクタ・アプリケーション・エンジニアリング(株)の協力により、速やかに行なわれたことを高く評価しています。」と述べています。

MicroBlazeは、Xilinx社(本社:米国カリフォルニア州サンノゼ)のFPGA上で動作する32ビットソフトプロセッサコアで、昨年10月に発表されたものです。Xilinx社はMicroBlaze用のOSを用意しておらず、TOPPERS/JSPカーネルは、MicroBlazeをサポートする最初のOSとなります。MicroBlazeとそれに対応したTOPPERS/JSPカーネルは、マイクロプロセッサ技術とリアルタイムOS技術の総合的な研究・開発に有用であるばかりでなく、FPGA上に組込みシステム全体を実現するためにも有効に活用できます。

ザイリンクス(株) テクニカルマーケティングマネジャー 澤田修氏は、「Time to Marketとシステム設計への柔軟性に対する要求が急激に増加しています。ザイリンクスFPGAとMicroBlaze上にITRON仕様に準拠したTOPPERS/JSPカーネルを採用することにより、エンベデッドシステム設計をより柔軟に行うことができ、さらにより幅広いアプリケーションに対し、少量でもコスト効率の高いシステム構築ができるようになります。」と述べています。

TMS320C54xは、システムLSI開発に不可欠となってきたDSPのトップメーカであるTEXAS INSTRUMENTS(TI)社によるパーソナルコミュニケーション分野向けのDSPのシリーズです。汎用プロセッサとDSP上で同じ仕様のリアルタイムOSが動作することは、ソフトウェア構成を柔軟に変更する上で有効と考えられます。

Release 1.3では、新たに5種類のプロセッサに対応した以外にも、コンフィギュレータを全面的に改訂するなど、数々の改良を行っています。さらにいくつかの改良を予定しているものの、μITRON4.0仕様準拠のリアルタイムOSとしては、完成度の高いものになっていると自負しています。また、利用条件の文言に誤解しやすい表現がありましたので、それも改めました。

TOPPERS/JSPカーネル(以下、JSPカーネルと略記)は、TOPPERSプロジェクトにおいて開発した、μITRON4.0仕様のスタンダードプロファイル規定に準拠したリアルタイムOSです。1999年に開発に着手し、2000年11月に最初のバージョンを公開しました。その後数回のバージョンアップを経て、今回配布を開始するRelease 1.3では、ターゲットプロセッサとして、M68040、SH3/4、SH1、H8、H8S、ARM7TDMI、V850、M32R、MicroBlaze、TMS320C54x、i386をサポートしています。また、SH2やMIPSなどにもポーティングされた実績があります。さらに、Linux上とWindows上で動作するシミュレーション環境を用意しています。

JSPカーネルの主な特長は次の通りです。

JSPカーネルは、オープンソースかつロイヤリティフリーのソフトウェアです。JSPカーネルのソースコードは、TOPPERSプロジェクトのウェブサイト(http://www.ertl.jp/TOPPERS/)からダウンロードすることができます。利用条件の詳細については、各ソースファイルの先頭に付加されている文言か、TOPPERSプロジェクトのウェブサイトを参照ください。

お問い合わせ先

本発表に関するお問い合わせは、以下にお願いします。

豊橋技術科学大学 情報工学系
組込みリアルタイムシステム研究室
助教授 高田広章
〒441-8580 豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1
TEL: (0532)44-6752 FAX: (0532)44-6781
Email: hiro@ertl.ics.tut.ac.jp

TOPPERSプロジェクトについて

TOPPERSプロジェクトは、組込みシステム構築の基盤となる各種のソフトウェアを開発し、良質なフリーソフトウェアとして公開することにより、組込みシステム技術ならびに業界の発展に資することを目的としたプロジェクトです。豊橋技術科学大学 組込みリアルタイムシステム研究室を中心として、プロジェクトの趣旨に賛同してソフトウェア開発/保守を分担する組織・個人により推進されています。

TOPPERS/JSPカーネルは、μITRON4.0仕様のスタンダードプロファイル規定に準拠したリアルタイムOSで、TOPPERSプロジェクトの最初の開発成果です。1999年に開発に着手し、2000年11月に最初のバージョンを公開しました。その後数回のバージョンアップを経て、今回、Release 1.3の配布を開始することとなりました。